この記事では、スペインでの外来語について書いてみたいと思います。
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スペイン語の外来語の基本
まず、スペイン人にとっての外来語は、主に英語なのですが、ややこしいのはどちらもヨーロッパ語族でアルファベットを使用するため、なまじっか発音が近いこと。ただし、スペイン語はほぼローマ字読みなので、英語もローマ字読みする部分が出てきます。たとえば、私はIT系エンジニアの仕事をしているので、IT関連の会社名では以下のようになります。
どうでしょう。どれもローマ字読みっぽいのですが、完全にそうではなく一部は英語読みになっています。しかも、のちほどお話しますが、「アマゾン」ではなく「アマソン」です。濁らないんです。このあたりは、スペイン語の発音ルールが適用されています。そして、英語っぽく読む部分で特徴的なのがerで終わる系。
- Tiger(ビレバンやダイソー的な雑貨チェーン店):タイゲル
- Burger King (ハンバーガー・チェーン):ブルゲル・キング
- Super(スーパー・マーケット):スーペル
- David Foster(有名な音楽プロデューサー):ダビ・フォステル
※語尾の d はスペイン語では発音しないので、「ダビッド」ではなく「ダビ」になります
つまり、英語だと「ー」と伸ばす音になるところが、普通に「エル」というローマ字読みっぽくなります。さらにややこしいことに、本来スペイン語の発音だと ge は「ゲ」ではなく「ヘ」という音になるはずなのに、そこは英語っぽく「ゲ」にしている。もう、節操がないというか適当ですね。
Zの発音
Zの音は、スペイン語では濁らずに「サ」行で発音します。そのため、よく野球選手などで見る名前のGonzálesは「ゴンザレス」ではなく「ゴンサレス」になります。そのため、以下のようにZを含む部分はサで発音します。
- Mark Zuckerburg(フェイスブックの創始者、マーク・ザッカーバーグ):マルク・サッケルブル
- Zara(日本でもお馴染みのアパレル店):サラ
ちなみに、Zaraはスペイン発祥のお店なので外来語ではないですね。どちらかというと、スペイン以外の国にとっての外来語。
となると、日本で皆が発音しているような「ザラ」ではなくて「サラ」が正しいんですけどね(と、あんまり細かいことをいうとめんどくさい人になるので、ザラでいいっちゃいいんですが)。
Sの発音
最後にもうひとつ法則を。英語でSから始まる単語がスペイン語ではESから始まるものになることがあります。
英語 | スペイン語 |
---|---|
stable | estable |
special | especial |
statue | estatua |
stadium | estadio |
state | estado |
SpainがEspañaになるのもそれが関係しています。
そして、これが外来語にどう影響するかというと、"S" から始まるものの発音が、だいたい "Es" になるんです。つまり、Starbucksは「エスタルバックス」に。これならまだ分からないでもないんですが、ひどいのはStar Wars。これまでのいろんな法則を合わせてどうなるかというと、「エスタルルル・ブォルズ」。しかも、ルルルの部分は巻き舌。これはさすがに初めて聞いたときに「そんな映画、知らないよ」と言ってしまって、「そんなはずはないだろ?世界的に有名な映画だぜ」って笑われてしまいました。
英語と混ざっている単語
Menú del díaの記事でも書きましたが、Menú(メヌー)はメニューではなくて「定食」とか「セット」のこと。メニューはCarta(カルタ)というので、このあたりは要注意です。メニュー見たいなと思って "Menú, por favor!" って店員さんに言うと、セットを注文してしまうかもしれません。
詳しくは、こちらの記事も参考に。
それからもうひとつ、tíquet(ティケッ)というのもややこしいです。これ、チケットのような言葉ですが、買い物をしたときにもらうレシートのことです。もちろん、切符や入場券のことを指す場合もあるんですが、普通は以下を使います。
- バスや電車の切符:billete(ビジェーテ)
- 映画館や美術館などの入場券:entrada(エントラーダ)
これでひとつ困ったのが、私がグラナダのアルカサル(お城)に行った時の話。あらかじめ、entradaつまり入場券はネットで購入していたので、Eメール添付の電子チケットとして持っていました。ただ、そのときは0歳児を連れていたのもあって、それとは別に券売所で子供用の無料の入場券(これは物理的な紙のもの)をもらう必要があったのです。で、このときにレシート、つまりtíquetも一緒に窓口で渡されました。
ここまでを整理すると、私の手元には
- Eメール添付の電子entrada(入場券)
- 大人用
- 子供用
- 子供用の紙の物理entrada(入場券)
- 券売所でもらったtíquet(レシート)
があったわけです。
さて、その状態でアルカサルの入口で係員に「1-1. Eメール添付のentrada(入場券):大人用」と「2. 子供用の紙の物理entrada(入場券)」を提示しました。すると、係員から "Tíquet!" と言われてしまい。「えっ、レシートなんて見せる必要あるの?」といぶかりながらも財布に入っているレシートを出そうとすると、"No. Tíquet!" (そうじゃない。チケット出して)
となおも要求する係員。スペイン語はまだあまりできない妻が「チケットだから、入場券じゃない?」と言われて気が付きました。私たちは顔つきからどうしてもアジア人、つまり外国人ということがバレバレで、まさかこいつスペイン語話すだろうとは思われていないので、係員としては必死に "Ticket!" と英語で入場券のことを言っていたのでした。ということで、正解は「1-2. Eメール添付のentrada(入場券):子供用」でした。
「分かるかーい、そんなの!tíquetって言ったらレシートだろがー」と思いましたが、仕方ない。向こうは良かれと思って英語で説明してくれているので、こういう行き違いが起きるんですね…。
最後に
スペインはなまじアルファベットを使うヨーロッパ言語圏なので、どうしても外来語も英語とスペイン語の中間のような中途半端なものになってしまいます。
とはいえ、かくいう日本人も英語の発音を無理やりカタカナ語にしているので、全然言えた義理ではないですね。昔、学生の頃にばりっばり帰国子女の知人から「ねぇねぇ、California(当然発音は "キャリフォーネャ" 的な流ちょうなの)ってカタカナでどう書くの?」と尋ねられ、「カ・リ・フォ・ル・ニ・アだよ」と教えたら「えー、うそだ。全然Californiaと違うじゃん!」と笑われたことがあります。どうしても、外来語はその国の発音の訛りに近づいて、元の音からかけ離れてしまうこともあるんですね。
最後にサブタイトルの伏線回収ですが、スペイン語のZは濁らないサ行になってしまうので、雨がたくさん降るときの擬音語のつもりで "Zaa Zaa" と書いても「ザーザー」ではなく「サーサー」になってしまうんです。最近は日本の漫画もスペインで翻訳されて出版されていますので、この手の擬音語はどうしているんでしょうか?
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